19平米でもミニマリストスタイルで広々住める、プレハブでエコなタイニーハウス
ミニマリストでスタイリッシュなタイニーハウス。フレキシブルな間取りで、室内は思いの外ゆったりと暮らせます。太陽光発電システムもついた、エコでサステナブルな住宅です。
こちらは永住用の家? 週末用の別荘? それともおやゆび姫用のタイニーハウス? たぶんどれも少しずつ正解で、ある意味、万人向けの家ともいえる家だ。とくに、家としてちゃんとしていて、しかも移動の自由もある家に住みたい人にはうってつけ。少なくとも、木造タイニーハウス〈フッテラルハウス〉の創業者であるマキシム・クレンノイさんが思い描いたのは、そんなコンセプトだった。妻と子どもの3人家族で住むための手頃な価格の住まいを探していたとき、この家を思いつく。そして、初めてミニマリストな住居を設計し、自分で選んだ土地に建てたのだった。
クレンノイさんが考案した《フッテラルハウス》(箱型の家、の意)は、フレキシブルに使えて、移動できて、しかもサステナブルな暮らしの可能性を広げてくれる住宅だ。プロトタイプを建てた後、クレンノイさんは建築家のナタリヤ・ズーコヴァさんに量産可能なミニマルな住宅の設計を依頼。ズーコヴァさんはわずかな種類の素材を使って家全体に連続性をもたせ、工夫をこらした造作家具をデザインし、シンプルな間取りに徹することで、快適さとミニマリズムのバランスがとれたクリエイティブな住宅を生み出した。
クレンノイさんが考案した《フッテラルハウス》(箱型の家、の意)は、フレキシブルに使えて、移動できて、しかもサステナブルな暮らしの可能性を広げてくれる住宅だ。プロトタイプを建てた後、クレンノイさんは建築家のナタリヤ・ズーコヴァさんに量産可能なミニマルな住宅の設計を依頼。ズーコヴァさんはわずかな種類の素材を使って家全体に連続性をもたせ、工夫をこらした造作家具をデザインし、シンプルな間取りに徹することで、快適さとミニマリズムのバランスがとれたクリエイティブな住宅を生み出した。
ズーコヴァさんが計算しつくした造りつけ家具のおかげで、19平方メートルという居住スペースも窮屈さや圧迫感を感じさせない。生活に必要なものだけで暮らすなら、収納も十分だ。
入口のすぐ横がクローゼット。クローゼットの扉は上から下までを覆うのでなく、中間だけをカバーする形にした。通常はコートやジャケットをかけて収納しておく。上と下の棚は完全にオープンになっている。
入口のすぐ横がクローゼット。クローゼットの扉は上から下までを覆うのでなく、中間だけをカバーする形にした。通常はコートやジャケットをかけて収納しておく。上と下の棚は完全にオープンになっている。
「内装はすべて、天井、壁、床、造作家具まで、白でペイントした針葉樹の木材を使いました。でまとまりがでて、広々とした印象です」とズーコヴァさん。居住スペースは全体をワンルームとして設計。
入口の右手はキッチンを配置。2口コンロ(電気ホットプレート)とシンクの間に小さな調理用スペースがある。冷蔵庫、食器洗浄機、換気扇、さらに食器類や調理道具、食品は、装飾を排したキャビネットの中に収納。太陽光発電システムのバッテリーもここに収め、窓際に設置した〈メーレンホフ〉(英語サイト)のトレンチ暖房(対流式暖房の一種)をはじめ、家全体に電気を供給している。「電気自動車の充電ステーションを追加でつけることもできます」とズーコヴァさん。
ダイニングエリアはキッチンの反対側に。テーブルと椅子のほか、壁にベンチも備え付けてある。座るためだけではない。「ベンチはものを入れる引き出しの役目もします。さらに予備のベッドにもできます」と、狭いスペースを活かすデザインにいちばんの関心を寄せるズーコヴァさんは説明する。ベンチの頭上と左側にもさらに収納スペースを設けた。
躯体を組み立ててからトラックで配送する。「すばやく簡単に設置できる家です。複雑な基礎はいりませんし、フーチング6つで支えるだけです」とズーコヴァさん。屋外のテラスもセットになっていて、こちらは2枚のパーツと別途3個のフーチングを使う。地面から15センチ上に設置する構造のため、階段を2、3段上がって家の中に入る。
室内の床はそのままバスルームの床へ続く。バスルームはキッチンと壁をはさんで背中合わせになっていて、敷居はない。
浴室は奥にウォークインシャワー、手前はシンクとその上にウォールミラーがある小さな空間だ。鏡のおかげで、空間は倍の広さに感じられる。トイレはドアを開けてすぐ右手に。ドアは内開きで、閉めると完全に壁面と同一面になる。「下水道システムにも接続できますが、コンポスト式トイレや雨水をためる給水タンクなど、自給型のシステムを使うことも可能です」。バスルームの換気にはファンを採用した。
家全体で自然に空気が循環するように設計されている。断熱材は〈スタイコ〉(英語サイト)の木質繊維素材を使用。建築物としては2014年のドイツの省エネルギー法が定める要求事項を満たし、エネルギー効率の証明書も取得している。試作では建材に3層構造のベニヤ板を使用し、それ自体は湿気を遮断しないため、別に防湿フィルムを張る必要があった。「代わりに、〈ディアゴナルプラッテン〉というライニング(裏張り)を使ってもかまいません」とズーコヴァさん。こちらは蟻継ぎ隙間なく接合した木材パネルで、斜めに配置することで耐荷重性能が高まる。「そうすれば防湿加工はいらなくなります。この素材がすばらしいのはその点です」。
長手の壁は大きなガラスの掃き出し窓で、小さな居住スペースを広々と感じさせる。影にならない南向きに設置すれば、居住スペースを太陽光が暖めてくれる。大型のスライド式窓で空気の入れ替えもできる。オプションで日よけの機能をつけて、日ざしで暑くなりすぎないようにすることも可能だ。
心地よく眠れる空間。最大4人まで眠れるようベッドを備えている。寝室のベッドがもっとも大きく、シングルとしても、引き出してダブルベッドとしても使える。
こちらもあわせて
Houzzツアー:フレキシブルで効率的なシアトルの新築の家
Houzzツアー:46平米のロフトを立体的に広く使ったリノベーション
こちらもあわせて
Houzzツアー:フレキシブルで効率的なシアトルの新築の家
Houzzツアー:46平米のロフトを立体的に広く使ったリノベーション
壁には折りたたみ式ベッドが設置されている。(写真左:シングルベッド。写真左手壁の上段にスペアのベッドを収納した状態。写真右:スペアのベッドを取り出し、2つのベッドを並べた状態)
3台目のベッドは、先に紹介したダイニングにあるベンチ。
3台目のベッドは、先に紹介したダイニングにあるベンチ。
ズーコヴァさんが生み出した洗練された造作家具に、考案者のクレンノイさんが先端技術をプラス。オプションの電気自動車充電ステーションもその1つだ。家の正面に設置でき、ソーラーシステムで充電できる。電気が余れば、インターネットを通じて専用アプリから《フッテラルハウス》に暮らす他の電気自動車所有者に売電するしくみもある。ほかにもアプリでは休日に家を貸し出したり、食料や必要なものを注文したりもできる。つまり、《フッテラルハウス》は電力を売ったり家を貸し出したりするビジネスを行うこともできるのだ。そう考えると箱そのものの値段は安い。
ミニマリストな暮らしはできるだけ多くの人にとって魅力的に映るべき、と考えてこそのデザインだ。最小限のスペースに高い快適性を加えている点が、この家のインセンティブになっている。
教えてHouzz
ミニマルな家に住んでみたいと思いますか?
こちらもあわせて
Houzzツアー:ブラジルの人気デザイナーが暮らすモダン&ミニマルな家
Houzzツアー:15平米でも快適に! 造作家具で空間を広く使った快適なミニマル住宅
タイニーハウスの記事を読む
スモールハウスの記事を読む
おしゃれなタイニーハウスの写真を見る
スモールハウスの写真を見る
建築家をさがす
教えてHouzz
ミニマルな家に住んでみたいと思いますか?
こちらもあわせて
Houzzツアー:ブラジルの人気デザイナーが暮らすモダン&ミニマルな家
Houzzツアー:15平米でも快適に! 造作家具で空間を広く使った快適なミニマル住宅
タイニーハウスの記事を読む
スモールハウスの記事を読む
おしゃれなタイニーハウスの写真を見る
スモールハウスの写真を見る
建築家をさがす
どんなHouzz?
居住可能人数:最大4人
所在地:都市部から地方まで、どこでも
規模:居住スペースは約19平方メートル。床面積約25平方メートル、テラス約18平方メートル
費用:バスルームつき基本タイプの場合、およそ52,300米ドル(約580万円)。オプションはキッチン3,800米ドル(約42万円)、家具類4,400米ドル(約49万円)、床暖房2,300米ドル(約26万円)。
設計:〈トランスストラクチュラ〉ナタリヤ・ズーコヴァ(ドイツ、ベルリン)
構想:〈フッテラルハウス〉(英語サイト)マキシム・クレンノイ
製作:〈フッテラルハウス〉
「スウェーデンなどいくつかの国では、建築許可なしで建てられる最大規模は床面積25平方メートルなんです」とズーコヴァさんは説明する。ただ、この家は100平方メートルまで広げられる設計だ。「プロトタイプはラトビアのメーカー〈ペイントエコ〉の黒の塗料でペイントしました。煮亜麻仁油と鉱物顔料、溶剤を配合した塗料です。メリハリのある力強い発色です」。
ズーコヴァさんは建築家として、リサイクルとミニマリスト的な室内空間の設計を特にテーマにしている。自身も建築家であるクレンノイさんが、シンプルながら快適な木の家というアイデアを実行に移すにあたってズーコヴァさんに声をかけたのはそのためだ。
家は箱型で、内部はバスルームのユニットをはさんで2つのコンパートメントに分かれた構造だ。大きなガラスの掃き出し窓が特徴の外観が屋内を広く見せている。