丘の上から駿河湾を見下ろす、シニアライフを見据えた家
掃除のしやすさや安全性など将来の暮らしに配慮しながら、景色と木の美しさを最大限活かして落ち着いた雰囲気をつくりだした家をご紹介します。
駿河湾と富士山を望み、広重や北斎の浮世絵にも描かれている旧東海道。その東海道五十三次の16番目「由比宿」のあった町の高台に建つのが鈴木邸だ。由比・蒲原エリアは、江戸時代の風情を残すために町屋や古民家再生のための相談会が定期的に開催されている。住まい手の鈴木夫妻は自由工房の石田正年さんとその相談会で出会った。
以前の鈴木邸は、45年程前に建てた母屋と離れがあり、家族8人で生活していた。子どもたちも独立し、鈴木久勝さんご夫婦で暮らすには広く、耐震性・耐久性も考慮して改築を決めたという。
以前の鈴木邸は、45年程前に建てた母屋と離れがあり、家族8人で生活していた。子どもたちも独立し、鈴木久勝さんご夫婦で暮らすには広く、耐震性・耐久性も考慮して改築を決めたという。
鈴木邸の敷地は約97坪。とにかくこの景色を活かしたコンパクトな家にしようと、鈴木夫妻と設計の石田さんの意見が一致し、計画がスタートした。
鈴木邸に続く坂道を歩いて玄関へ入ると、木のぬくもりに包まれる。外壁も内壁も薩摩中霧島壁という火山灰からできたシラス壁を使用。シラス壁は100%自然素材で、においを吸収するだけでなく結露を防ぎ、調湿効果が高いのでエアコンの使用頻度が減り光熱費を抑えることができるのだ。
玄関も家の中もほとんどが引き戸。老後を見据え、できるだけフラットに仕切りや段差を少なくした。リビングダイニングと屋根裏にある冷暖房2台で年間を通じて家中の温度をほぼ一定に保っている。
ダイニングから続くリビングには、海をのぞむ一角に2m20cmの大きな掃き出し窓があり、駿河湾と遠く伊豆半島を望む景色がすばらしい借景となっている。
天井は2m20cmと低く設定して重心を下げた。椅子やソファに座った時に心地よい高さだ。また、床と天井は中央にある柱を起点に駿河湾に向かって張り合わされている。低い天井ながら大きな窓と組み合わせることで開放感を強調するデザインだ。
天井は2m20cmと低く設定して重心を下げた。椅子やソファに座った時に心地よい高さだ。また、床と天井は中央にある柱を起点に駿河湾に向かって張り合わされている。低い天井ながら大きな窓と組み合わせることで開放感を強調するデザインだ。
テレビ台や棚などはすべて造作。将来を考えると手すりをつけるという発想もあるが、あえてちょうどよい高さに台や棚を設置。これらの造作家具に手をおいて暮らしてもらうことで住まい手の歩行をサポートできるように配慮されている。
キッチンは、奥様の希望で手元が見えないようにとカウンターの立ち上がりを高めにした対面キッチン。床はコルクマット、十分な作業スペースも確保されている。なかでも奥様がキッチンで一番気に入っているのは、天井の埋め込み式の照明だ。適切な照度がありながら、優しい明かりになっているのが特徴。照明器具が見えない分、天井の見た目もすっきりとし、杉板の木目の色が映える。
脱衣スペースの床はキッチンと同様、足当たりがやわらかなコルクマット敷き。
鈴木夫妻共にお気に入りという浴室は木の香りに包まれている。壁は全面、青森ヒバを使用。香りで癒してくれるだけでなく、渇きやすく、カビにくいという青森ヒバの特徴もお掃除が楽でありがたいとか。
緑に囲まれ、早朝には海から上る日の出を眺める。冬でも日中は暖房も必要なく、ぽかぽかと暖かい。久勝さんは1日中外を眺めていても飽きることなく、夫妻それぞれの部屋があっても、ほとんどリビングダイニングでゆっくりと過ごすことが多いのだとか。
由比の高台に建つコンパクトな住まいは、年齢を重ねた家族がゆったりと過ごすシニアライフに最適の住まいだった。自分たちの将来を見据えつつ、美しい駿河湾の景色を堪能できる家には静かな時間が流れていた。
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シニア世代が豊かに過ごすためのインテリアのヒント10
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所在地:静岡県静岡市
住まい手:鈴木久勝さん、奥様
敷地面積:318.55平方メートル(96.3坪)
延床面積:81.41平方メートル(24.63坪)
間取り:リビングダイニングキッチン、洗面、バスルーム、寝室×2、客間、納戸、ロフト
竣工年:2016年
建築設計:自由工房
構造:木造平屋建